KH6/AC1AM, Oahu Island(FT8での移動運用)

ハワイ島からオアフ島に移動。1日だけ家族と別行動をし移動運用を試みました。以下は、Facebookへの投稿の引用です。

夏期休暇でHawaiiに。

この家の父親は、家族旅行中でも1日は別行動の日をもらって無線ごっこが許されることになっている。観光客でごった返すビーチではアンテナを張れないので、レンタカーを借り、あまり人がいなさそうなOahu島の西側にある公園、Kahe Point Beach Park(https://goo.gl/maps/CBfBBRkrt6vKdmfq7 )を目指す。

Honoluluから40分ほどで公園の駐車場に入ろうとすると、真っ黒に日焼けしday packを背負った男性が入り口に立っていて、ガラス越しに声をかけてくる。

「この公園は初めてか?」
「そうだ」
「5ドル払え。Securityのためだ」

どうみても怪しい。

「Officialなのか?」
「そうだ」

この黒々と日焼けしたおっさんが管理人とはとても思えないが、ふと、以前読んだハワイに関する本を思い出す。ハワイの観光地部分はきらびやかだが、全島を見渡すと失業率も高く、貧富の差が激しいらしい。このおっさんは原住民系のようにも見える。無線ごっこの邪魔をされてもつまらない。

深く考えるのはやめて5ドル払う。

・・・

さて、公園から見える海はとても美しい。青く青く、水平線まで澄み切っている。

アンテナを立て始める。

海外で移動運用をしているとまず間違いなく声をかけられる。40代くらいの男性が寄ってきて、「これは何だ?」と聞いてくる。「Ham Radioだ」と答えると、「ああ、遠くの人と電波で交信するやつか。ずいぶん前にOld guyがやってるのを見たことがあるよ。」という。ちょっと悔しいので「今でもStill popularなんだよ」と反論する。

この男性、以前は日本人女性と結婚していて東京ドームホテルに2週間滞在したことがあるが、その後彼女は自分を好きではなくなり、今はフィリピン人女性と結婚していて3人の子供がいるらしい。なぜこの男性がこんなプライベートの核心部分を私に話したのかはわからない。私が日本から来た通りすがりだからかもしれない。

・・・

車に戻って無線機の電源を入れ、電波を出し始める。18MHz帯で、インドネシアの局を皮切りに続々と交信に成功する。日本の局が多いが米国本土からも結構呼ばれる。やはりHawaiiは本土の人にとっても憧れの地なのか。近場のVanuatuやFijiから電波が出ているのが確認できるが、なぜかこちらからの電波は届かない。南クック諸島の局とは交信に成功。

・・・

周波数を変更するためアンテナを調整していると、さっきの男性とは別の男性が声をかけてくる。「これはCBか?」「いや、Amateur Radioだ」「ああ、CBよりもっと飛ぶやつだな?」米国では免許のいらない”Citizen Band”の方がメジャーなようである。

それにしてもこの男性、妙に食いつきが良く、「どこをpick upできたのか」「何千マイルも飛ぶのか」と質問攻めにあう。そうこうするうちに少し視線を落とし、手に持っていたスプレー缶を見ながら語り始める。

「このスプレー缶なんかを集めている。こないだは新品の傘を売って金を作った。家族がいるんだ。」

「こういうことを言うのはおかしいと思うんだが、なんか、shareしてもらえないか。」

私はしばし考え込む。男性は私からいったん離れ、ちょうどそこに来た別の車に寄り、運転席の老女に声をかけている。

心が決まる。財布から1ドル札を数枚だして折りたたみ、別の車から戻ってきた彼に差し出す。

私の口から思いがけず出た言葉。
“Here you are, my friend.”

彼から返ってきた言葉。
“Thank you, thank you. God bless you.”

・・・

“My friend”と”God bless you”

こういう言葉が英語には組み込まれており、米国社会はこういう言葉の積み重ねで形作られているような気がする。

仮に日本で同じような場面に出くわしたら、日本語ではどういう言葉を交わすのだろうか。

折しも日が傾き始めた。水平線には雲一つ無い。寄せる波の音と、すぐ近くの火力発電所からの騒音がBGM。

沈む夕日はとてもとても美しかった。

IMG_2346.JPG

 


 

さて、このサイトには、無線家向けにもう少し無線寄りの詳細な情報を記載しましょう。

Kahe Point Beach Parkの駐車場の奥に、マストを立てるのに好都合な1本のポールがありました。これに一番近いパーキングロットに車を停めます。

まず、最近よく使っている「ATU(T-1)をつかったヨット型のループアンテナ」(参考→「仏英運用記 その②~ウェールズ1日目」)を張り、14MHz帯に出てみます。

IMG_2330.JPG

3局ほどQSOできたものの、コンディションのせいか、芳しくありません。そこで17mにQSYしようとしたのですが、なぜかATUが作動しません・・。

実は、私はこの「ループアンテナ」にやや限界を感じており、常々、「ギボシダイポール」を試してみたいと思っていました。で、材料はそろえていたものの離日までに製作時間が取れず、今回の旅行には、材料をそのまま持ってきていました。

さて、ここは思い切って現地製作してみるか(笑)。

ギボシダイポールの記事はネットを検索すればいくらでも出てきますが、21MHz以上を3倍高調波で設計されたJF1DIRさんの記事にでているものに注目していました。

エレメント バンド エレメント長[cm]
a 18MHz 390
b 14MHz 100
c 10MHz 191
d 28MHz 75
e 24MHz 92
f 7MHz 120
g 21MHz 15
JF1DIR業務日誌(はてなblog版)
移動運用用HFマルチバンドアンテナ」から引用。

さすがに現地製作で7メガから28メガまで全部作る時間はとれませんが、今出たい18MHzと14MHzだけならエレメント4本のみですので、なんとかなりそうです。約4mのエレメントと約1mのエレメント、各2本ずつを用意しました。

ところが、今回の旅行に持参したマスト(玉網柄)は6.3m、エレメントが地面まで届きません。マスト少し縮めて4メートルくらいにし、エレメントは地上にペグで直接止めるすることにしました。こんな簡易方式でも、エレメントを少し切って調整したところ、幸運なことに18MHz帯でSWRが1.8に落ちました。

まあこれでよしとし、FT8でCQを出します。途中眠気に襲われうたた寝してしまいましたが、3時間ほどで42局とQSOできました。

 

その後、14MHz帯用の延長エレメント部分も調整したところ、こちらもSWRが1.5ほどに下がりました。14MHz帯では日没前に11局、落日を眺めた後も11局とQSOできました。

日が落ちるとあたりは真っ暗です。ちょっと怖い感じになってきたので、マストをたたんで早々に引き上げました。

真っ青な海と美しい夕日を味わうことができ、ギボシダイポールの威力にも期待を持てた移動運用でした。

(2019-07-28 記)

コメントを残す