5.6GHz帯が危ない!(「周波数再編アクションプラン(令和2年度第2次改定版)」のパブコメに意見を提出)

例年、パブリックコメントに掛けられている「周波数再編アクションプラン」ですが、今年は2度目の意見募集が行われました。

「周波数再編アクションプラン」の見直しに係る意見募集(2020年9月9日)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban09_02000376.html

アクションプラン全体を見ると、5.6GHz帯のアマチュアバンドがさまざまな形で狙われていることがひしひしと感じ取れます。折しも、米国では、3.5GHz帯アマチュアバンドの削除が決まってしまいました(FCC Orders Amateur Access to 3.5 GHz Band to “Sunset”)。バンド防衛には不断の努力が必要です。

私は、以下の意見を提出しました。

(ここから↓)

【意見1】2.4GHz帯及び5.7GHz帯のアマチュア業務について

(1) 5650~5850MHzはアマチュア業務に割り当てられているところ、従前より、マイクロ波への入門バンドとして利用されてきた。昨今は、廉価なアマチュアテレビ送信機が普及したことにより、ドローンに搭載して地上への動画伝送が行われている。同周波数帯のアマチュア業務への割り当ては二次業務ではあるものの、昨今、利用が活発化している。

過去3回の周波数再編アクションプランに関するパブコメにおいて、5.6GHz帯のアマチュア業務への二次業務としての割当を変更する予定はないとのご回答を頂いた。現時点でもこのご回答内容に変更はないか、改めてご確認をお願いしたい。

「周波数再編アクションプラン(平成30年11月改定版)」に関するパブコメ結果
http://www.soumu.go.jp/main_content/000584118.pdf

「周波数再編アクションプラン(令和元年度改定版)」に関するパブコメ結果
https://www.soumu.go.jp/main_content/000642377.pdf

「周波数再編アクションプラン(令和2年度改定版)」に関するパブコメ結果
https://www.soumu.go.jp/main_content/000685971.pdf

(2) 空間伝送型ワイヤレス電力伝送の制度化(27頁)が計画されている周波数の中に、アマチュア無線にも用いられている2.4GHz帯及び5.7GHz帯が含まれている。2020年7月13日にパブリックコメントの結果が公表された陸上無線通信委員会報告(諮問第2043号)は、2.4GHz帯については「最も干渉が大きい・・・最悪のケースでは、4.4km の離隔が必要」とし、5.7GHz帯に至っては「約 17.5km の所要離隔距離が必要となる結果」、「実運用上のケースにおいて、パラボラアンテナと空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの主方向が向き合った場合には、共用は難しい」との見解を明示している。共用は難しいとの見解が示されている以上、ワイヤレス電力伝送の制度整備は不可能又は時期尚早であるから、「令和2年度内に制度化を行う」との記載は削除されたい。

また、同報告は、第5章において、「既存の無線システムとの運用調整のための官民が連携した仕組みの構築について検討が行われることが必要である」としているが、アマチュア無線との運用調整のための仕組みは構築されつつあるのか。もし、そのような仕組みの構築が検討されていないのであれば、やはり、「令和2年度内に制度化を行う」との記載は削除されなければならない。

(3) 5.8GHz 帯(5.77~5.85GHz)における狭域通信(DSRC)システムについて、「利用状況を踏まえ、他の無線システムとの共用の可能性等を検討する。」とされている(19頁、20頁)。また、5.7GHz帯の無人移動体画像伝送システムについても、周波数の有効利用技術に関する研究開発を推進するとされている。これらの周波数帯は、5.7GHz帯のアマチュアバンドと競合するので、共用の可能性については、極めて慎重に検討を進められたい。

(4) (2)(3)が推進されれば、現実問題として、アマチュア無線側に混信等を与え、アマチュア側が使用周波数を変更せざるを得ないケースが出てくると思われる。そこで、アマチュア側の柔軟な対応を可能とするために、アマチュア無線パンドプラン(無線局運用規則第二百五十八条の二の規定に基づくアマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別(総務省告示第百七十九号)のうち、2400MHz帯及び5600MHz帯に関する部分を改定または廃止し、民側の裁量を広げるようにしていただきたい。

【意見2】デジタル方式の短波国際通信について(9頁)

「海外における短波帯のデジタル方式の導入状況等を踏まえ、短波国際通信(固定局)
を対象にデジタル方式の導入可能性を検討する。」と述べられている。

アマチュア業務においては、すでに、複数の方式による短波帯におけるデジタル音声通信の実績がある。「D-STAR」は日本アマチュア無線連盟(JARL)が開発したデジタル方式であり、海外では短波帯での運用実績がある。また、「FreeDV」は我が国でも運用実績がある。アマチュア無線界としては、これらの運用実績を踏まえ、短波国際通信(固定局)におけるデジタル方式の導入可能性の検討に貢献する用意がある。

他方で、日本のアマチュア無線機メーカーは、今なお世界的に高い評価とシェアを確保しているが、昨今は中国等の安価なメーカーに押され気味である。特に、SDR等のデジタル最新技術への対応に後れがあるように感じられる。また、かつて日本アマチュア無線連盟(JARL)主導で策定されたアマチュアのデジタル通信方式「D-Star」は、一時は世界中に普及したが、昨今、海外では、DMR等の業務規格を応用した無線システムに置き換わりつつある。そこで、日本のアマチュア無線機メーカーの栄光を維持するために、デジタル系の開発費の補助・助成といったテコ入れ策をご検討いただきたい。

【意見3】MF帯及びHF帯のアマチュアバンドについて(9頁)

「第4章 各周波数区分の再編方針」「Ⅰ 335.4MHz 以下」において、令和元年度改訂版では、「今後取り組むべき課題」として、「②アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性について、令和元年度に検討を開始する。」と述べられていたが、令和2年度改訂版案では、この記載が削除されてしまった。今回の第2次改定版でも同様である。

これは、令和2年3月11日にパプコメ結果が公表された「無線局免許手続規則の一部を改正する省令案等(アマチュア局の免許手続の簡素化、無資格者の利用機会の拡大及び周波数の追加割当て)」により、1.9MHz帯と3.5MHz帯のバンド拡張が認められたからと思料する。このバンド拡張自体は、アマチュア無線界として素直に歓迎し、感謝申し上げる。

しかし、今回拡張が認められなかった「歯抜け部分」について、海外ではアマチュア業務に割り当てられている以上、混信の問題が避けられず、我が国において業務用途に用いるのには適さないと思われる。したがって、これらの「歯抜け部分」についても、引き続き、業務用無線の他の周波数への移行を推進した上で、アマチュア業務への割当をご検討いただきたい。さらに、5MHz帯の追加もご検討をお願いしたい。

以上の方針を明確化するため、「アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯及びHF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性について、引き続き検討する。」との記載を追加されたい。

【意見4】V-High帯域[207.5~222MHz]について(9頁)

同帯域を利用していた「i-dio」が、巨額の負債を抱えて先日放送を終了したように、この帯域の有効活用は苦戦を強いられている。

他方、351MHz帯を用いたデジタル簡易無線(登録局)は、業務・レジャーを問わず利用することができることから、昨今利用が活発化しており、大都市を中心にチャンネルが逼迫している状況である。また、同周波数に隣接する222~225MHz帯は、米国を始め多くの国においてアマチュア業務に割り当てられている。

そこで、V-High帯域[207.5~222MHz]の一部を、デジタル簡易無線またはアマチュア無線の帯域として割り当てることをご検討いただきたい。

【意見5】「新しい電波利用の実現に向けた研究開発等」について(28頁)

「(2-5) 公共分野における緊急ライフラインや放送及び通信手段の確保」の一環として、災害発生時にアマチュア無線が通信手段を提供してきた実績があるが、今後も、アマチュア無線家は、通信を通じた社会貢献を行う用意がある。そこで、アマチュア無線の本来業務の一つに、ボランティアとして実施する災害時の通信やその訓練も兼ねた公的イベント等の運営に係る通信などの「社会貢献」を含めることを目標として、「アマチュア無線による社会貢献の推進」を、取り組むべき研究開発の1項目に追加していただきたい。

(2020-10-10 記)

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