周波数再編アクションプラン(令和2年度改定版)(案)に対するパブコメ

表記のパブコメ募集に対し、昨日(2020年4月10日)、以下の意見を提出しました。

今回は、無線趣味界の最新の動向をできるだけ盛り込むよう努めました。5.7GHz帯ATV(ドローン)、ワイヤレス電力伝送の見直し、デジタル短波通信(FreeDV等)、日本の無線機メーカへのてこ入れ、1.9/3.5/5MHz帯の開放、V-High帯域のデジ簡及びアマチュアへの開放、アマチュア無線による社会貢献などです。パブコメの機会を通じて無線趣味界の動向を総務省に知っていただくことは意味のあることと考えたからです。

【意見1】5650~5850MHzのアマチュアバンドについて

5650~5850MHzはアマチュア業務に割り当てられているところ、従前より、マイクロ波への入門バンドとして利用されてきた。昨今は、廉価なアマチュアテレビ送信機が普及したことにより、ドローンに搭載して地上への動画伝送が行われている。同周波数帯のアマチュア業務への割り当ては二次業務ではあるものの、昨今、利用が活発化している。

まず、「周波数再編アクションプラン(平成30年11月改定版)」に関するパブコメ結果(http://www.soumu.go.jp/main_content/000584118.pdf)において、「5.7GHz帯について、現時点では、アマチュア業務への割当てを廃止する予定はございません。」とご回答いただき、「周波数再編アクションプラン(令和元年度改定版)」に関するパブコメ結果(https://www.soumu.go.jp/main_content/000642377.pdf)において、「5650-5850MHzのアマチュア業務への二次業務としての割当てについて、現時点での特段の変更は予定しておりません。」とご回答いただいた。現時点でもこのご回答内容に変更はないか、改めてご確認をお願いしたい。

次に、「周波数再編アクションプラン(令和元年度改定版)」の「第3章 重点的取組」「II
ダイナミックな周波数共用の推進」(6頁)において、「令和2年度までにダイナミック
周波数共用システムを構築する」とあるが、その対象に5.8GHz帯が含まれており、「III 自動運転及び Connected Car
社会の実現に向けた対応」(6頁)においても「5.8GHz 帯 DSRC(ETC
にも用いられている通信方式)の周波数利用の効率化」が謳われていた。しかし、令和2年度改訂版案では、これらの記載が削除されていた。アマチュア無線家の立場から、これらの検討事項から5.8GHz帯が削除されたことを歓迎するが、これらの検討事項に5.8GHz帯を復活させる予定があるのかについてご回答いただきたい。

他方で、「XII ワイヤレス電力伝送の制度整備に係る検討」において、「5.7GHz帯」が検討対象に含まれているところ、令和元年度改訂版では、「平成30年12月より情報通信審議会において検討を開始しており、引き続き制度整備に係る検討を行う」とされていたものが、令和2年度改訂版案では、「情報通信審議会で検討を行い、令和2年度内に制度化を行う。」とされてしまった。しかし、ワイヤレス電力伝送の整備検討の過程には、以下の点で問題がある(「陸上無線通信委員会報告(案)に対する意見募集
- 「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち「構内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」
-」において同様の意見を提出した。)。以下の以下の問題点に関する見解をお聞かせいただきたい。

(1) アマチュア無線周波数帯との共用検討結果をみると、2400MHz帯についても(報告書案181頁)5600MHz帯についても(同202頁)、空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムのビームの方向とアマチュア無線の空中線の指向方向が一致する場合の検討結果しか示されていない。しかし、アマチュア無線の空中線は固定ではなく360°各方向に回転させて使用することが通例であるから、相互のビーム方向が一致する場合だけでなく、アマチュア側の空中線の指向方向をどの程度外せば共用が可能かについての検討も必要なはずである。

もし、そのような検討が行われているのであれば、その結果を報告書に盛り込むか、別の形で示していただきたい。もし検討が行われていないのであれば、共用検討が不十分であり政策を先に進めることはできないと考えられる。

なお、これらのアマチュア無線周波数帯で現実に用いられている空中線は指向性アンテナ(パラボラまたは八木)が一般的であるから、上記検討を、無指向性で利得も低いホイップアンテナを用いた検討で代替することはできないと考える。」

(2) 仮にWPTが導入されてしまう場合、現実問題として、アマチュア無線側に混信等を与え、アマチュア側が使用周波数を変更せざるを得ないケースが出てくると思われる。そこで、アマチュア側の柔軟な対応を可能とするために、アマチュア無線パンドプラン(無線局運用規則第二百五十八条の二の規定に基づくアマチュア業務に使用する電波の型式及び周波数の使用区別(総務省告示第百七十九号)のうち、2400MHz帯及び5600MHz帯に関する部分を廃止し、民側の裁量を広げるようにしていただきたい。」

【意見2】デジタル方式の短波国際通信について

「第4章 各周波数区分の再編方針」「Ⅰ 335.4MHz 以下」の「具体的な取組」「1 制度整備等」「①
短波デジタル通信[6~26MHz]」(9頁)において、「海外における短波帯のデジタル方式の導入状況等を踏まえ、短波国際通信(固定局)
を対象にデジタル方式の導入可能性を検討する。」と述べられている。

アマチュア業務においては、すでに、複数の方式による短波帯におけるデジタル音声通信の実績がある。「D-STAR」は日本アマチュア無線連盟(JARL)が開発したデジタル方式であり、海外では短波帯での運用実績がある。また、「FreeDV」は我が国でも運用実績がある。アマチュア無線界としては、これらの運用実績を踏まえ、短波国際通信(固定局)におけるデジタル方式の導入可能性の検討に貢献する用意がある。

他方で、日本のアマチュア無線機メーカーは、今なお世界的に高い評価とシェアを確保しているが、昨今は中国等の安価なメーカーに押され気味である。特に、SDR等のデジタル最新技術への対応に後れがあるように感じられる。また、かつて日本アマチュア無線連盟(JARL)主導で策定されたアマチュアのデジタル通信方式「D-Star」は、一時は世界中に普及したが、昨今、海外では、DMR等の業務規格を応用した無線システムに置き換わりつつある。そこで、日本のアマチュア無線機メーカーの栄光を維持するために、デジタル系の開発費の補助・助成といったテコ入れ策をご検討いただきたい。

【意見3】MF帯及びHF帯のアマチュアバンドについて

「第4章 各周波数区分の再編方針」「Ⅰ 335.4MHz 以下」の「今後取り組むべき課題」において、令和元年度改訂版では、「②
アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性について、令和元年度に検討を開始する。」と述べられていたが、令和2年度改訂版案では、この記載が削除されてしまった。

これは、令和2年3月11日にパプコメ結果が公表された「無線局免許手続規則の一部を改正する省令案等(アマチュア局の免許手続の簡素化、無資格者の利用機会の拡大及び周波数の追加割当て)」により、1.9MHz帯と3.5MHz帯のバンド拡張が認められたからと思料する。このバンド拡張自体は、アマチュア無線界として素直に歓迎し、感謝申し上げる。

しかし、今回拡張が認められなかった「歯抜け部分」について、海外ではアマチュア業務に割り当てられている以上、混信の問題が避けられず、我が国において業務用途に用いるのには適さないと思われる。したがって、これらの「歯抜け部分」についても、引き続き、業務用無線の他の周波数への移行を推進した上で、アマチュア業務への割当をご検討いただきたい。さらに、5MHz帯の追加もご検討をお願いしたい。

以上の方針を明確化するため、「②
アマチュア局が動作することを許される周波数帯(バンドプラン)のうちMF帯及びHF帯について、既存の業務用無線の動向等を踏まえ、バンドプラン等の見直しの可能性について、引き続き検討する。」との記載を追加されたい。

【意見4】V-High帯域[207.5~222MHz]について

同帯域を利用していた「i-dio」が、巨額の負債を抱えて先日放送を終了したように、この帯域の有効活用は苦戦を強いられている。

他方、351MHz帯を用いたデジタル簡易無線(登録局)は、業務・レジャーを問わず利用することができることから、昨今利用が活発化しており、大都市を中心にチャンネルが逼迫している状況である。また、同周波数に隣接する222~225MHz帯は、米国を始め多くの国においてアマチュア業務に割り当てられている。

そこで、V-High帯域[207.5~222MHz]の一部を、デジタル簡易無線またはアマチュア無線の帯域として割り当てることをご検討いただきたい。

【意見5】「新しい電波利用の実現に向けた研究開発等(別紙)」について

「(2-5) 公共分野における緊急ライフラインや放送及び通信手段の確保」の一環として、災害発生時にアマチュア無線が通信手段を提供してきた実績があるが、今後も、アマチュア無線家は、通信を通じた社会貢献を行う用意がある。そこで、アマチュア無線の本来業務の一つに、ボランティアとして実施する
災害時の通信やその訓練も兼ねた公的イベント等の運営に係る通信などの「社会貢献」を含めることを目標として、「アマチュア無線による社会貢献の推進」を、取り組むべき研究開発の1項目に追加していただきたい。

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